【9月企画展示 COUPE 】厚地 琴美 ATSUCHI kotomi
■期間:2020年9月18日〜2020年10月18日
静止している絵画の中で、動いているものについて考えることに興味があります。例えば年代を重ねることに移り変わる車のシルエット、どんどんサイズが大きくなるiphone、プレート、移動によって長い年月をかけて姿を変えた大陸の形、毎日何かが生み出される公園の砂場、発酵して膨らむやわらかいなパンの生地が、熱を帯びて形を得る過程など、身の回りにあるものは日々変化して揺らいでいるように見えます。
絵画は常に壁に寄り添ってぴたりと動かない。そんな絵の画面を覗き込んでみた時に、ちょっとずつ揺らいでいるといいのにと考えました。人は絵を前にした時に、まず同じようにぴたりと静止して、それから横側にたれた絵の具のシミを発見したり、遠く離れて眺めみたり、うろうろと動きます。そんな現象が長く続く絵を描きたくて仕方ありません。同じ形になることはない海のくだける波をぼうっと眺めるような。
技法に関しては、ほとんどが版画の技法から着想を得ています。薄く溶いた光沢のあるメディウムを、シルクスクリーンの要領で1層ずつ流し込んでいき、画面に薄い膜が重なり、その作業を続けていくとだんだん画面に形が浮かび上がってきます。重ねるばかりではなく、最近の作品では彫刻刀で画面を削ってみたりと、空間が奥に引っ込んだり手前に来たり、膨らんだり縮んだり、途中で線が途切れたり、背景や輪郭が曖昧になったりと、揺らぎのある空間を作れたらと日々製作を行なっています。時間をかけて浮かび上がってくる形の極小さな違いがふと際立つ瞬間があります。気が滅入る反復的な行為ですが、その揺らぎを視覚的にみつけるための絵です。
coupe(クーペ)、発酵過多になる頭に切れ目を入れてみる。
【coupe】
1:窯入れ前の生地の表面にナイフで切れ目を入れること
2:原義は「切る」の意
3:箱型乗用車
厚地 琴美 ATSUCHI kotomi(https://atsuchikotomi.tumblr.com)
1994 長崎県生まれ
2016 京都造形芸術大学 美術工芸学科 油画コース 卒業
2018 東京藝術大学 美術研究科 絵画専攻 第4研究室 卒業
2019 東京藝術大学 美術研究科 絵画専攻 第4研究室 研究生 卒業
グループ展
2019 〈ARTIST FAIR KYOTO〉京都文化博物館(京都)
2018 〈GEIDAI UNDER GROUND〉Echika 池袋ギャラリー(東京)
2018 〈東京藝術大学修了制作展〉東京藝術大学(東京)
2017 〈フォー〉Cumono gallery(京都)
2016 〈0il painting 4th Lab〉東京藝術大学(東京)
2016 〈京都造形芸術大学卒業制作展〉京都造形芸術大学(京都)
2015 〈まぼろしとのつきあいかた〉ギャルリ・オーブ(京都)
2015 〈The painting Vol.01 留まる/留める前に〉京都造形芸術大学(京都)
2015 〈 - 〉元立誠小学校(京都)
受賞歴
2018 メトロ財団賞
DMデザイン:蒲原早奈美(https://sanami-kamohara.tumblr.com/Design)