いま見えているこの花、それを使って染液をつくって染めても、同じ色が再現されるわけではないこと。草や葉を描こうとすれば、すぐに手に取るであろう緑色が、植物からは直接取ることができないこと。植物の生と人の生に、あいだ、が存在しています。いつからか、そんなあいだが無かったことになっていて、いつでもどこでもすべてが手の中にあることが、求められてきたように思います。染めることも織ることも、手で行なうことをただ礼賛したいわけではないでしょう。それでも、へだたりもひろがりも、身を持って感じることで、ようやく、拠り所を見つけられるのかもしれません。