その建築家は、近代という時代を象徴する人物でしょう。彼のつくった建築はもちろんのこと、実現しなかった案や、語ったり書かれたりした言葉をめぐって、たくさんのひとが批判や称賛、解釈を重ねてきたように思います。同じ時代を体現する、鉄もガラスもコンクリートも、それら以外の何ものでもないまま、建築としてそこに在ります。しかし、建築そのものと、心の像とは、つねに少しだけズレていきます。そのズレが何なのか、どこからそのズレが生まれてくるのか。問いかけ、追い求めると、彼が亡霊のように、ぬっと現れてくるようです。