言葉を記す、それはひとり孤独に為されることです。きっと、とてもしずかな時間なのでしょう。わたしが、だれかへ、という、言葉が持っていたベクトルを失ったとしたら、言葉はどこへ向かうのでしょうか。 ―忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには― 確かに言葉は誰かの手で記されたが、そこに、ひとけは感じられません。むしろ、言葉が自ら、どこからやってきたのかを忘却してしまったのかもしれません。ふりしきる雨が、さまよいつづけて霧に変わるように、言葉もまた、行先も時の流れも忘れて、浮かんでいるのです。
言葉を記す、それはひとり孤独に為されることです。きっと、とてもしずかな時間なのでしょう。わたしが、だれかへ、という、言葉が持っていたベクトルを失ったとしたら、言葉はどこへ向かうのでしょうか。 ―忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには― 確かに言葉は誰かの手で記されたが、そこに、ひとけは感じられません。むしろ、言葉が自ら、どこからやってきたのかを忘却してしまったのかもしれません。ふりしきる雨が、さまよいつづけて霧に変わるように、言葉もまた、行先も時の流れも忘れて、浮かんでいるのです。