熊谷守一『へたも絵のうち』(平凡社、2000)

数十年もの間、家の敷地の外に出ず、海外には生涯出ることがなかったにもかかわらず、描いたものは国や時代を超えて、語られ、並べて比較され、評価され続けています。しかも、ほとんど昼夜逆転した生活をして絵を描いていたといいます。世間の事象を避けて、消極的な生き方を選んできたと語りながらも、うまく描こうとする絵を否定し、下手に描けた絵からは逃げれないことを知っていました。社会に適合できない、芸術家の象徴として見られるかもしれません。それでもその絵に、描かれているものの生々しさに、ずっと大切な当たり前のことが宿っている気がします。
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