「見る行為と世界のあいだに隙間があり、その間隙が遠近法やグリッドを生んだ。印刷もまた、紙とインキの隙間から生まれる。隙間があるから出会いがある」と、鈴木一誌さんは言い、「たとえば、『かたち』という文字と、それが意味するものの距離は、タイポグラフィによって近づけられたり遠ざけられたりする」と、戸田ツトムさんは言います。本を読んでいて、ふと気になった、触れている紙や見ている文字の形、配置など、単に情報が欲しいだけなら、どれも邪魔なものなのでしょうか。堆積した言葉の静かな歌を聴くことも、紙が浮かび上がらせる光景を見ることも、できなくなっているのかもしれません。