編著:平松洋子『忘れられない味 「食べる」をめぐる27篇』(講談社、2019)

覚えていることと忘れないこととは、どこか異なった領域である気がします。いつでも思い出せる訳じゃなくても、忘れていたのではなくて、ふとしたときに記憶が鮮明に現れることもあるように。しかも、食べたものの味は、なんとも言葉にし難いものです。口にしてすぐ、どんな味がするのか尋ねられても、うまく説明できずに困ったことは誰にでもあるでしょう。だけどなぜか、忘れられない、としか言いようのない、食べるという経験がある気がします。たくさんの言葉を重ねても、近づけた手応えはない、それでも繰り返し到来して、また、味わいます。
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