長い年月があれば、その間には何度か、建物の姿も自然の見せる表情も、人々の気持ちも、そのどれもが呼応したかのように、ひとつの情景が現れることがある気がします。生きものの生き死にや季節の移ろい、変化し続けるものたちがそのときだけはぴったりと息を合わせて、一瞬止まってしまったようにも見えるのです。朽ちた家を、新しいものに入れ替えることは簡単です。しかし、それではもう、家は建っていても、そこには無いのかもしれません。土地の肌理、これまでの暮らしの形、百年かそれ以上の時間を語る細部がそこかしこにあるはずです。