堀江敏幸『象が踏んでも 回送電車Ⅳ』(中央公論新社、2014)

目的地に急いでいる乗客としては、無意味どころか邪魔でさえある、回送、の文字が通り過ぎていく時間。無駄のない移動を望んでいては、見えないかもしれませんが、しかし、たしかにその電車は走っていて、何らかの役割を担っているのでしょう。 ─誰が、どんなふうに慰め、どんなふうに励ましてくれるにせよ、最後に必要になるのは、やはり言葉である─ 待つ時間、言葉を熟成させる時間を、わたしたちはいつも後回しにしたまま、やり過ごしてしまいます。現れ始めた歪みの知らせに、静かに気付ける、丁寧な言葉に出会いませんか。
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