尾形亀之助 画:松本竣介『美しい街』(夏葉社、2017)

読んでいた本を置いて、部屋の窓をなんとなく眺めます。建ち並ぶ家や虫の集まる街灯、軋む音を響かせて通り抜ける自転車、何度見たか分からない、見たという経験さえはっきりとしない、しかし、見るものがどれもやけに具体的に感じるのです。初めて訪れた建物のなかでも、それぞれの窓から何が見えるか、ひとつひとつ確認してまわることでしょう。窓ごしの景色は、なまけた姿を見せていて、退屈なせいか、こちらの話にのってくれるかもしれません。たわいもない会話の、滲んだかたちは、わたしたちを自由にしてくれます。
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