阿部昭『March winds and April showers bring May flowers. 阿部昭短編集』(水窓出版、2019)

─たんに他人がいるからというだけじゃなくて、僕には自分の居場所がすこしずつけずりとられて行くような気がしていた─ 誰かと同居していれば、自分ひとりでは済ませられないことが、あれこれ生じてきます。家族だって、それは同じことでしょう。しかも、居場所に限らず、所有物や時間、思いまで、誰かがずかずかと入り込んできて、その一部やすべてを、持っていってしまうのです。自分が消えても、ほとんど何も変化しないような、いのちの反復と偏在。とられとりかえす、その領域のなかで、充実がやってきます。
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