齋藤陽道『異なり記念日』(医学書院、2018)

いつもは賑やかな近所の深夜の静けさや、騒がしく流れ続ける店内放送、甲高い笑い声、いきおい良く出たおならの音。それらが聞こえないとは、聞こえなくなるとは、音以外でそれを伝えるとは、つい、その状況や手段のことを考えてしまいます。当たり前のこととして、自分の感じている世界だけから、物事を捉えてしまうからでしょうか。しかし、さまざまな世界を知っても、万能な感覚を備えることは困難でしょう。異なることを前にしたときの恐怖と、それに触れられたときの安堵、その実感の確かさがあるはずです。あちらこちらが異なること、忘れていたことを思い出すかもしれません。
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