ポール・オースター 訳:柴田元幸『幻影の書』(新潮社、2011)

誰にも見えないものは、存在すると言えるのでしょうか。あるいは、それを見たと語り、記すひとの言葉は信用に足るのでしょうか。 無いものしてしまえば簡単ですが、夢によって生かされていることもまた事実です。 -現実において変容が生じ、私は違う人間になった- 音や色、奥行など、何かが欠けている世界に、それでも強く揺さぶられてしまうのだとすれば、幻は、それ自体が世界なのかもしれません。本の中の本や映画、誰かが語るある人の人生、絵に描かれた物語。消されても、忘れられても、それぞれの世界はまだ息を潜めているのでしょう。
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