光嶋裕介『ぼくらの家。 9つの住宅、9つの物語』(世界文化社、2018)

ひとつの建築には、それがつくられた道程があり、おおよそその主人公として語られるのは建築家だと思います。しかし、その建築物において、実際に長い時間を過ごし、関わりあう人たちがいるからこそ、建築が生きられているとも言えます。暮らす人々、近所の動物たち、通り抜ける風や音、その地で生き続けてきた木や岩、そして、家や建物自身。建築をめぐる物語はきっと、複数、少なくとも登場するものたちの数だけあるのでしょう。そうやって、いくつもの語られ方を許してくれる、おおらかさが、人や空間の豊かさなのかもしれません。
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