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バイクも、自転車さえも無かった頃、郵便配達のために家々を歩いてまわっていました。いつもの道を、毎日、おそらくは同じ時間帯に、つまりは飽きるほど見た景色のなかを延々と歩いていたのです。それに加えて、石を拾い集めるために、一輪車を押して歩き続けます。落ちていた、自然が形づくった石たちが寄せ集められると、次第に、別の生命の声が聞こえてきたのでしょうか。ひたすらに歩いて、石を積んでいるうちに研ぎ澄まされた感覚は、無機物と共振するかのようです。ひとりの人が拾い集めた、無数のいのちに、畏怖を感じるかもしれません。