アントニオ・タブッキ 訳:須賀敦子『島とクジラと女をめぐる断片』(河出書房新社、2018)

だれのものでもない、自分の人生をひとは歩んでいます。他のひとの人生に触れて、互いに影響を与えながら。ひと以外の生きものとだって、そうでしょう。しかも、記憶はずっと曖昧です。いったいどこまでが、自分の人生と言えるのでしょうか。 ─どれが真実の単なる写しであり、どれが人の書いたものの写しであるか─ どこまでも広がるように見える海に、ひとつの島を起点として飛び出していき、別の島への途上、難破する。そして、ただ、海に漂う眼として、諸島を眺める、その光景はきっと、空想ではありません。
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