谷川俊太郎『バウムクーヘン』(ナナロク社、2018)

ひとりのひとの真ん中に、空白があります。そこには何もないわけではありません。満たされたり、沸き立ってきたり、足りなくなったり、ふと、からっぽな気がしたりします。自分の、うちがわは、こころは、くらくて見えないまま時間ばかりがすぎていきます。それでも、ゼロは横に並んでいくだけですが、わっかはいくつも重なっていくでしょう。だから、波紋みたいにむこうがわまで響いて、誰かが気づいてくれるのかもしれません。ひとつのくにの真ん中にも、空虚があります。ぽっかり空いたところから、どうでもいいほどにたいせつな歴史がうずを巻いています。
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