編:池澤夏樹『日本文学全集30 日本語のために』(河出書房新社、2016)

今、こうしてパソコンのキーボードで打つことで書いている言語は、日本語に含まれるでしょう。漢字、ひらがな、カタカナ。これらを組み合わせて、文字表現がかたちづくられます。地理も歴史も違ったそれぞれの文字には、異なる調子や感触があると思います。それに加えて、業界的な専門用語、場面に応じた表現形式など、会う人に合わせて誰もが沢山の自分を抱えているように、言葉を着替え、着回し、着こなしていきます。そんな文字も、声に出してみれば、音だけになります。どこでもいつまでも在り得る文字と、身近なところしか届かない声。日本語のざわめきに包まれてみるのです。
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