立原道造『立原道造詩集』(角川春樹事務所、2003)

言葉を記す、それはひとり孤独に為されることです。きっと、とてもしずかな時間なのでしょう。わたしが、だれかへ、という、言葉が持っていたベクトルを失ったとしたら、言葉はどこへ向かうのでしょうか。 ―忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには― 確かに言葉は誰かの手で記されたが、そこに、ひとけは感じられません。むしろ、言葉が自ら、どこからやってきたのかを忘却してしまったのかもしれません。ふりしきる雨が、さまよいつづけて霧に変わるように、言葉もまた、行先も時の流れも忘れて、浮かんでいるのです。
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