柴崎友香 『その街の今は』 (新潮社、2009)

昔の写真にうつった風景、いつか誰かから聞いた話、記憶の中の親しかった人の表情。どんなシーンにも、その場所の今があったように思います。 ―共通の話題がないとき、わたしはいつも住んでいる場所を聞いてしまう― 目の前にいる人との距離を測ってくれるのも街や土地、つまりは場所なのかもしれません。時が流れ、人も年をとるように、街も姿を変えていきます。それでも、場所を介して言葉をかわすと、その人との間に想像上の空間が立ち上がります。動かないはずの場所が、言葉によって今ここで生きるのです。
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