古川日出男『馬たちよ、それでも光は無垢で』(新潮社、2,011)

そのひとは小説家で、小説を執筆することを仕事としています。言葉を書き、綴り続けるのです。ある時を境としてその目的を失う、いや、そもそも目的なんてはじめから無かったのかもしれませんが。失語した小説家は、それでも「できること」、つまりは言葉を、小説を書きはじめます。過去に自らが書いた小説の登場人物も、同じ土地においてできることをしたように。このとき、できること、というのは役に立つことを直接的には意味しないはずです。ただ生きる、自分を生かすこととひとつになった行ないに至るには、何かを失わなければならないのでしょうか。
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